デジタルファイルの長期保存フォーマット早見表 日本の「標準的フォーマット」と国際機関の評価を並べて可視化

国が公文書の保存に認めるのは12形式 — TIFFもWAVEもCSVも入っていない

「長期保存用の画像はTIFF」「データはCSVで持っておけば安心」。長期保存の実務では、こうした通念がよく語られます。しかし、日本の行政文書の移管において国が実際に指定している「標準的フォーマット」を数えると、TIFFもWAVEもCSVもXMLも入っていません。指定されているのはわずか12形式です。本記事は、その12形式が何であり、何が入っていないかを、一次資料の出典つきで確認します。制度は改正されます。最新の情報は必ず原典でご確認ください。

情報確認日: 2026年7月26日。本記事はデジタルファイルの長期保存フォーマット早見表が国立公文書館・内閣府の公開資料を調査した結果に基づく要約です。当サイトは長期保存の適否を判定するものではありません。

国が定める「標準的フォーマット」は12形式

根拠となるのは、内閣府大臣官房公文書管理課長による「行政文書の管理に関するガイドラインの細目等を定める公文書管理課長通知」(令和4年2月10日制定、令和7年2月14日一部改正)の「1-2 行政文書の作成について」表1「標準的フォーマット」リストです。この通知は、国立公文書館「電子公文書の作成・保存・利用ガイドブック(前編 〜作成から移管まで〜)」(2025年4月、6ページ目)にも引用されており、移管対象の行政文書は原則としてこの「標準的フォーマット」で作成することが望ましいとされています。表にすると次の12形式です。

類型標準的フォーマット拡張子の例
文書作成・表計算・プレゼンテーションPDF/A-1pdf
PDF/A-2pdf
PDF1.7pdf
Word 2007以降docx
Excel 2007以降xlsx
PowerPoint 2007以降pptx
画像JPEG 2000jp2
画像PNGpng
画像JPEGjpg
音声・動画MP3mp3
音声・動画MPEG2mpg
音声・動画MPEG4mp4
12国が定める「標準的フォーマット」の数
11点不採用のTIFF 6の評価点(採用されたPDF/A-1・PNGは10点)
3形式評価コメントで「国際標準ではない」と明記された形式(TIFF・GIF・WAVE)

12形式に入っていないもの

長期保存の話題でよく名前が挙がる形式のうち、この12形式に含まれていないものを挙げると、TIFFWAVEBWFFLACCSVXML・ODF系(OpenDocument)・GIF、そして通知にあるPDF/A-1・A-2とは別の適合レベルであるPDF/A-3です。ここで確認できるのは「含まれていない」という事実だけであり、これらの形式の良し悪しを評価するものではありません。

国立公文書館のリスク評価 — 評価点と採否は一致しない

国立公文書館 総務課デジタル推進室「電子公文書等の長期保存フォーマットを含む長期保存に関する調査報告」(令和6年3月28日)は、約20形式について6軸・12点満点のリスク評価を行っています(p.8・p.10・p.11)。

内容配点
A仕様が公開されていること2=国際標準 / 1=仕様公開 / 0=非公開
B世界中で広く使用されていること2=世界中で使用 / 1=限られた使用 / 0=使われていない
C可逆圧縮等が可能なこと2=圧縮品質指定可 / 1=圧縮可能 / 0=圧縮不可・不明
Dメタデータを付与できること2=形式が標準準拠 / 1=任意要素可 / 0=固定・不明
E技術要素が独立していること2=独立 / 0=依存・不明
F特許やライセンス等の制約がないこと2=制約なし / 0=制約あり・不明

このうちA(仕様の公開性)で2点となるのは、仕様が公開されているだけでなく、ISO・IEC・ITU・W3Cのような団体による「国際的なコミュニティ活動の実態がある」場合とされています。この定義を踏まえて、p.11の評価点表(原文どおり)の一部を並べます。

形式ABCDEF合計採用
PDF/A-122112210
PDF/A-222122211
PDF/A-322122211×
PDF1.722122211
Word 2007以降(OOXML)22122211
OpenDocument Text21122210×
JPEG200022222212
PNG 1.222112210
JPEG22222212
TIFF 612222211×
GIF1211229×
WAVE12212210×
MP322222212
MPEG-422222212
MPEG-222222212

ここで確認できる事実を並べます。TIFF 6は合計11点で、採用されたPDF/A-1(10点)・PNG 1.2(10点)を上回っていますが、標準的フォーマットには含まれていません。 WAVE(10点)も、採用されたPDF/A-1・PNG 1.2と同点ですが含まれていません。評価コメントを見ると、TIFF 6には「仕様は公開されているが、国際標準ではない。可逆圧縮で圧縮品質が選択可能。」、WAVEには「非圧縮方式であり、幅広く利用されているが、国際標準ではない。」とあります。GIFのコメントにも「国際標準ではない」という同じ表現があり、この3形式が評価コメントで「国際標準ではない」と明記された形式のすべてです。そして、この3形式はいずれも標準的フォーマットに含まれていません。

あわせて、合計点だけでは採否を説明できないことも表から読み取れます。PDF/A-3は11点で不採用、PDF1.7は同じ11点で採用です。OpenDocument系は10点で不採用、PNGは同じ10点で採用です。報告書自体は評価点と採否の因果関係を明示していません。本記事も「TIFFはA軸が1点だったから落ちた」という断定はせず、評価点と採否という2つの事実を並べて示すに留めます。

米国NARAとの対比 — 制度の目的が異なる2つの区分

米国国立公文書館(NARA)の "Appendix A: Tables of File Formats" は、移管を受け付ける記録の形式を Preferred(優先)と Acceptable(許容)の2段階で区分しています。

区分形式備考
PreferredTIFF 4, 5 & 6デジタル写真。仕様は TIFF Revision 6.0(1992, Adobe)
PreferredBroadcast Wave(BWF) 0, 1 & 2デジタル音声。コーデックは Linear PCM(LPCM)、仕様は EBU Tech Specification
PreferredCSV構造化データ。仕様は IETF の CSV 用 MIME タイプ文書
PreferredXML 1.1構造化データ。W3C 仕様
AcceptableJPEG(JFIF)ISO/IEC 10918 系
AcceptableJPEG 2000ISO の Core coding system
AcceptableMP3ISO/IEC 11172-3

並べると、NARAが Preferred に挙げている TIFF・BWF・CSV・XML は、日本の「標準的フォーマット」12形式には1つも入っていません。反対に、日本が画像でJPEG・JPEG 2000を、音声でMP3を採用しているのに対し、NARAではこの3形式はいずれも Acceptable 止まりです。

ただし、両者は制度の目的も対象も異なります。NARAは米国連邦政府機関の記録の移管を対象とし、日本の通知は行政文書の移管を対象としています。対象範囲も評価の体系も異なる2つの制度を並べているだけであり、優劣を比較するものではありません。また、「国際的にはWAVEが最上位」という理解も正確ではない点に注意が必要です。NARAのPreferredに挙げられているのはWAVEそのものではなく、放送用途向けに規格化されたBroadcast Wave(BWF)であり、両者は別の形式として扱われています。

一太郎・OASYS — 日本固有のデータ

この調査報告には、英語圏の主要な形式データベースには存在しない、日本語ワープロソフト固有の評価も含まれています。

形式合計点扱い
一太郎 4〜12 / 2004〜20083候補外
OASYS0候補外
Microsoft Word 97-20036候補外
Microsoft Excel 97-20036候補外
Microsoft PowerPoint 97-20036候補外

一太郎の評価コメントは、公用文のルールへの対応と国内での一定の利用実績を認めたうえで、「仕様が非公開であり」、将来的な見読性の確保に課題があるとしています。OASYSの評価コメントはさらに踏み込み、「ツール及びサポートが終了している」ことに加え、仕様が非公開でバージョンによって見読性に問題があるとしています。一太郎3点・OASYS0点という数字自体が、公的機関の資料として公開されているという点で珍しい情報です。

実務者が確認すべき手順

ここまでの内容から言えるのは、「この形式で保存すべき」という結論ではなく、確認すべき手順です。まず、自分が扱っているファイルの形式が、通知の「標準的フォーマット」12形式のどれかに該当するかを確認します。該当しない場合(TIFF・WAVE等)は、その文書・データが移管の対象になり得るのか、なるとすればどう扱われるのかを、所属機関の文書管理担当・情報システム部門に確認します。通知は令和4年2月10日制定・令和7年2月14日一部改正と、実際に改正されています。今後も改正される可能性があるため、本記事の内容だけで判断せず、必ず内閣府・国立公文書館の最新の公表資料を確認してください。

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出典・関連リンク

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制度は改正されます。最新の情報は必ず原典でご確認ください。

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