「PDFにしておけば安心」は本当か — PDF/A-1・A-2・A-3とPDF1.7の違い
「PDFにしておけば長期保存は安心」という通念があります。しかし国の「標準的フォーマット」に含まれる「PDF」は、PDF/A-1・PDF/A-2・PDF1.7の3つだけです。同じ「PDF/A」を名乗るPDF/A-3は含まれていません。制度は改正されます。最新の情報は必ず原典でご確認ください。
「標準的フォーマット」に含まれる「PDF」は3つだけ
国立公文書館「電子公文書の作成・保存・利用ガイドブック」(2025年4月)6ページ目が示す「標準的フォーマット」12形式のうち、「PDF」を名乗る形式はPDF/A-1・PDF/A-2・PDF1.7の3つです。同じPDF/Aシリーズの中でも、PDF/A-3はこの12形式に含まれていません。国立公文書館の別の調査報告(令和6年3月28日)の評価表には、さらにPDF/A-4・PDF2.0も登場しますが、いずれも最終的な標準的フォーマットには採用されていません(PDF/A-4は9点、PDF2.0は10点。ともに採否は×)。
PDFとPDF/Aは別の規格 — ISO番号が示す違い
「PDF」と「PDF/A」は同じ拡張子.pdfを使いますが、規格としては別物です。通常のPDF(PDF1.7)はISO 32000-1として標準化されているのに対し、PDF/Aは長期保存向けに項目を絞ったプロファイル規格として、ISO 19005シリーズの番号が個別に割り当てられています。
| 形式 | 規格番号 | 国の標準的フォーマット |
|---|---|---|
| PDF1.7 | ISO 32000-1:2008 | 含まれる |
| PDF/A-1 | ISO 19005-1:2005 | 含まれる |
| PDF/A-2 | ISO 19005-2:2011 | 含まれる |
| PDF/A-3 | ISO 19005-3:2012 | ★ 検討されたが不採用 |
国立公文書館の評価コメントを並べる
国立公文書館の調査報告(令和6年3月28日)は、形式ごとに評価点と評価コメントを付しています。原文の一部を引用すると次の通りです。
| 形式 | 評価点 | 評価コメント |
|---|---|---|
| PDF/A-1 | 10点 | 「長期保存のためのPDF。文字及び色の再現性を担保。」 |
| PDF/A-2 | 11点 | 「PDF/A-1に透明効果やレイヤー構成などが追加されたバージョン。」 |
| PDF/A-3 | 11点 | PDF/A-2に多様なファイルの埋込みが可能となった点を説明した上で「埋込みファイルの見読性やセキュリティなどに考慮が必要」と付言 |
| PDF1.7 | 11点 | 「多くのソフトが対応した国際標準のPDF。」 |
11点で並ぶPDF/A-2とPDF/A-3、採否は分かれた
評価点だけを見ると、PDF/A-2とPDF/A-3はともに11点で並びます。しかし最終的な標準的フォーマットに含まれているのはPDF/A-2までで、PDF/A-3は含まれていません。報告書は評価点と採否の関係を明示しておらず、当サイトも両者の因果関係を判定しません。ここで示せるのは「評価点が同じでも採否が分かれている」という事実の併置です。
PDF/A-1とPDF1.7の違い — フォント埋込の要否
標準的フォーマットに含まれる3つのPDFのうち、PDF/A-1とPDF1.7の間にも扱いの違いがあります。国立公文書館の評価では、PDF/A-1はフォント埋込が必須とされる一方、PDF1.7はフォント埋込が必須ではないとされています。当サイトはこの違いから「PDF/Aにすべき」といった判断を示すものではなく、両者が前提の異なるフォーマットであるという事実を並べるにとどめます。
米国議会図書館(LoC)もPDF/A-3に踏み込んだ判断を避けている
国内の話に限らず、米国議会図書館(LoC)の Sustainability of Digital Formats にあるPDF/A-3の個票(fdd000360)にも、この形式に対して踏み込んだ判断を避けている記述があります。当サイトが同ページを直接確認したところ、LoCはPDF/A全般への選好を米国著作権局のCircular 7bで示す一方、PDF/A-3という版そのものについては、実務での経験が積み重なるまで選好を示さないとする趣旨の記載が確認できました。日本の標準的フォーマットにPDF/A-3が含まれていない点とあわせ、事実として提示します。
実務の前に確認すべきこと
「PDFなら長期保存できる」という一言では、PDF1.7・PDF/A-1・PDF/A-2・PDF/A-3のどれを指しているのかが分かりません。当サイトはどの形式を選ぶべきかを判定しませんが、少なくとも「標準的フォーマットに含まれるPDFは3種類で、PDF/A-3は含まれていない」という事実は、実務で確認する価値があります。制度は改正されます。最新の情報は必ず原典でご確認ください。
出典一覧
このページを引用する場合
本記事の情報を引用・紹介いただく場合は、記事名「「PDFにしておけば安心」は本当か — PDF/A-1・A-2・A-3とPDF1.7の違い」と情報確認日「2026年7月26日」をあわせてお示しください。当ページへのリンクは任意です(リンクいただける場合は https://www.conbu.jp/tool/archive-format/article-pdf-is-not-enough.html をご利用ください)。
免責事項: 本記事は国立公文書館・米国議会図書館(LoC)等の公式サイトではなく、長期保存の適否を判定するものでもありません。掲載している内容は調査時点で各機関の公開資料から確認できた要約です。通知・ガイドラインは改正されうるため、最新の内容は必ず出典元の原典でご確認ください。詳細は免責事項をご確認ください。