デジタルファイルの長期保存フォーマット早見表 日本の「標準的フォーマット」と国際機関の評価を並べて可視化

可逆と非可逆 — 国の標準的フォーマットに可逆の音声形式は1つも無い

可逆圧縮は元のデータを完全に復元できる圧縮方式で、非可逆圧縮は一度圧縮すると元には戻せません。国の「標準的フォーマット」12形式の内訳を確認すると、画像には可逆・選択可の形式がある一方、音声・動画に指定された形式には可逆のものが1つもありません。制度は改正されます。最新の情報は必ず原典でご確認ください。

情報確認日: 2026年7月26日。本記事は特定機関の公式ページではありません。掲載内容はデジタルファイルの長期保存フォーマット早見表が国立公文書館・米国国立公文書館(NARA)の公開資料を調査した結果に基づきます。

可逆圧縮と非可逆圧縮の違い

可逆圧縮(ロスレス)は、データを圧縮しても元の状態に完全に復元できる方式です。非可逆圧縮(ロッシー)は、復元時に元のデータの一部が失われ、二度と元には戻せません。国立公文書館の調査報告(令和6年3月28日)は、この性質を形式ごとの評価軸の一つとして扱っています。

国の標準的フォーマット12形式の内訳

国立公文書館「電子公文書の作成・保存・利用ガイドブック」(2025年4月)が示す12形式のうち、画像はJPEG2000PNGJPEGの3つ、音声・動画はMP3MPEG2MPEG4の3つです。可逆性で分けると次の通りです。

類型形式可逆性
画像JPEG2000選択可(可逆圧縮を選べる)
画像PNG可逆(非圧縮または可逆圧縮)
画像JPEG非可逆
音声・動画MP3非可逆
音声・動画MPEG2非可逆
音声・動画MPEG4非可逆

画像には可逆(PNG)や可逆圧縮を選べる形式(JPEG2000)が含まれる一方、音声・動画に指定されたMP3・MPEG2・MPEG4はいずれも非可逆です。12形式全体で見ると、非可逆に区分されるのは4形式(JPEG・MP3・MPEG2・MPEG4)で、音声・動画の指定形式に可逆のものは1つもありません。

国立公文書館の評価軸C「可逆圧縮等が可能なこと」

国立公文書館の評価は6つの軸の合計12点満点で構成されており、軸Cは「可逆圧縮等が可能なこと」で、2点=圧縮品質指定可、1点=圧縮可能、0点=圧縮不可・不明という基準です。JPEG・JPEG2000・MP3・MPEG2・MPEG4はいずれも軸Cで2点を得ており、他の軸とあわせて12点満点(6形式中5形式)になっています。

形式軸C(可逆圧縮等が可能なこと)合計点
JPEG2点12点
JPEG20002点12点
MP32点12点
MPEG22点12点
MPEG42点12点

非可逆であっても「圧縮品質を選択できること」が軸Cで満点評価される構造になっている、という事実は押さえておく価値があります。当サイトはこの評価配点の妥当性を判定しません。

WAVE(非圧縮)は10点で不採用

音声形式のうち、圧縮を行わないWAVEは評価点10点で、標準的フォーマットの候補には挙がったものの最終的には採用されていません。国立公文書館の評価コメントは「非圧縮方式であり、幅広く利用されているが、国際標準ではない」というものです。

NARAとの対比 — PreferredはBWFであってWAVEではない

米国国立公文書館(NARA)の移管ガイダンスにも、音声・画像それぞれにPreferred/Acceptableの区分があります。音声分野でPreferredとされているのはBroadcast Wave(BWF)(コーデックはLinear PCM)で、MP3はAcceptable止まりです。画像分野でもPreferredはTIFFで、日本が採用しているJPEG・JPEG2000はAcceptable止まりです。

分野NARAでPreferred日本の標準的フォーマットとの関係
音声Broadcast Wave(BWF)日本の標準的フォーマットには含まれない
音声(Acceptable)MP3日本では標準的フォーマットとして採用
画像TIFF日本の標準的フォーマットには含まれない
画像(Acceptable)JPEG / JPEG2000日本では標準的フォーマットとして採用

ここで注意が必要なのは、NARAのPreferredは「WAVE」ではなく「Broadcast Wave(BWF)」だという点です。WAVE単体はNARAでもAcceptable止まりであり、BWFとWAVEを同一視すると誤りになります。なお、NARAは米国連邦記録の移管、日本は行政文書の移管を目的とした制度であり、対象も目的も異なります。両者を単純な優劣で比較できるものではありません。

実務者への締め

国の標準的フォーマットにおいて、音声・動画に可逆形式が指定されていないことは事実として確認できます。ただし当サイトはこれを根拠に「可逆形式で保存すべき」とは述べません。制度の目的や評価軸を踏まえた判断は、実務者ご自身が原典にあたって行ってください。制度は改正されます。最新の情報は必ず原典でご確認ください。

広告スペース

出典一覧

このページを引用する場合

本記事の情報を引用・紹介いただく場合は、記事名「可逆と非可逆 — 国の標準的フォーマットに可逆の音声形式は1つも無い」と情報確認日「2026年7月26日」をあわせてお示しください。当ページへのリンクは任意です(リンクいただける場合は https://www.conbu.jp/tool/archive-format/article-lossless-vs-lossy.html をご利用ください)。

免責事項: 本記事は国立公文書館・米国国立公文書館(NARA)等の公式サイトではなく、長期保存の適否を判定するものでもありません。掲載している内容は調査時点で各機関の公開資料から確認できた要約です。通知・ガイドラインは改正されうるため、最新の内容は必ず出典元の原典でご確認ください。詳細は免責事項をご確認ください。