可逆と非可逆 — 国の標準的フォーマットに可逆の音声形式は1つも無い
可逆圧縮は元のデータを完全に復元できる圧縮方式で、非可逆圧縮は一度圧縮すると元には戻せません。国の「標準的フォーマット」12形式の内訳を確認すると、画像には可逆・選択可の形式がある一方、音声・動画に指定された形式には可逆のものが1つもありません。制度は改正されます。最新の情報は必ず原典でご確認ください。
可逆圧縮と非可逆圧縮の違い
可逆圧縮(ロスレス)は、データを圧縮しても元の状態に完全に復元できる方式です。非可逆圧縮(ロッシー)は、復元時に元のデータの一部が失われ、二度と元には戻せません。国立公文書館の調査報告(令和6年3月28日)は、この性質を形式ごとの評価軸の一つとして扱っています。
国の標準的フォーマット12形式の内訳
国立公文書館「電子公文書の作成・保存・利用ガイドブック」(2025年4月)が示す12形式のうち、画像はJPEG2000・PNG・JPEGの3つ、音声・動画はMP3・MPEG2・MPEG4の3つです。可逆性で分けると次の通りです。
| 類型 | 形式 | 可逆性 |
|---|---|---|
| 画像 | JPEG2000 | 選択可(可逆圧縮を選べる) |
| 画像 | PNG | 可逆(非圧縮または可逆圧縮) |
| 画像 | JPEG | 非可逆 |
| 音声・動画 | MP3 | 非可逆 |
| 音声・動画 | MPEG2 | 非可逆 |
| 音声・動画 | MPEG4 | 非可逆 |
画像には可逆(PNG)や可逆圧縮を選べる形式(JPEG2000)が含まれる一方、音声・動画に指定されたMP3・MPEG2・MPEG4はいずれも非可逆です。12形式全体で見ると、非可逆に区分されるのは4形式(JPEG・MP3・MPEG2・MPEG4)で、音声・動画の指定形式に可逆のものは1つもありません。
国立公文書館の評価軸C「可逆圧縮等が可能なこと」
国立公文書館の評価は6つの軸の合計12点満点で構成されており、軸Cは「可逆圧縮等が可能なこと」で、2点=圧縮品質指定可、1点=圧縮可能、0点=圧縮不可・不明という基準です。JPEG・JPEG2000・MP3・MPEG2・MPEG4はいずれも軸Cで2点を得ており、他の軸とあわせて12点満点(6形式中5形式)になっています。
非可逆であっても「圧縮品質を選択できること」が軸Cで満点評価される構造になっている、という事実は押さえておく価値があります。当サイトはこの評価配点の妥当性を判定しません。
WAVE(非圧縮)は10点で不採用
音声形式のうち、圧縮を行わないWAVEは評価点10点で、標準的フォーマットの候補には挙がったものの最終的には採用されていません。国立公文書館の評価コメントは「非圧縮方式であり、幅広く利用されているが、国際標準ではない」というものです。
NARAとの対比 — PreferredはBWFであってWAVEではない
米国国立公文書館(NARA)の移管ガイダンスにも、音声・画像それぞれにPreferred/Acceptableの区分があります。音声分野でPreferredとされているのはBroadcast Wave(BWF)(コーデックはLinear PCM)で、MP3はAcceptable止まりです。画像分野でもPreferredはTIFFで、日本が採用しているJPEG・JPEG2000はAcceptable止まりです。
| 分野 | NARAでPreferred | 日本の標準的フォーマットとの関係 |
|---|---|---|
| 音声 | Broadcast Wave(BWF) | 日本の標準的フォーマットには含まれない |
| 音声(Acceptable) | MP3 | 日本では標準的フォーマットとして採用 |
| 画像 | TIFF | 日本の標準的フォーマットには含まれない |
| 画像(Acceptable) | JPEG / JPEG2000 | 日本では標準的フォーマットとして採用 |
ここで注意が必要なのは、NARAのPreferredは「WAVE」ではなく「Broadcast Wave(BWF)」だという点です。WAVE単体はNARAでもAcceptable止まりであり、BWFとWAVEを同一視すると誤りになります。なお、NARAは米国連邦記録の移管、日本は行政文書の移管を目的とした制度であり、対象も目的も異なります。両者を単純な優劣で比較できるものではありません。
実務者への締め
国の標準的フォーマットにおいて、音声・動画に可逆形式が指定されていないことは事実として確認できます。ただし当サイトはこれを根拠に「可逆形式で保存すべき」とは述べません。制度の目的や評価軸を踏まえた判断は、実務者ご自身が原典にあたって行ってください。制度は改正されます。最新の情報は必ず原典でご確認ください。
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