日本語フォントのライセンス早見表 「商用利用可」の一言では終わらない、6つの許諾を分けて掲載

Webフォント配信とアプリ埋め込みは別の許諾 — @font-faceの前に条文のどこを見るか

「商用利用OK」と書かれたフォントを、そのまま自社サーバから@font-faceで配信したり、アプリやゲームにファイルごと同梱したりしてよいのか。この2つは商用利用そのものとは別の許諾であり、条文での扱いも互いに異なります。利用前に必ず各提供元の最新の条文をご確認ください。

情報確認日: 2026年7月25日。本記事は特定フォントの公式ページではありません。掲載内容は日本語フォントのライセンス早見表が公式ライセンス条文・公式FAQを調査した結果に基づきます。

3つを混同しない

「商用利用可」という一言には、性質の異なる3つの行為が混ざっています。①印刷物やWebサイトのデザインとして、そのフォントで字を組む「商用利用」。②フォントファイルを自分のサーバ・CDNに置き、@font-faceで配信する「Webフォント配信」。③アプリ・ゲーム・電子書籍・PDFなどにフォントファイル自体を同梱する「アプリ埋め込み」です。①と②③を分ける基準は、フォントファイルというソフトウェアそのものが利用者の手元に渡るかどうかです。①は字の形が画面表示や印刷物として固定されるのに対し、②③は条文が想定する「複製」「配布」の対象そのものになります。当サイトが条文を確認した範囲では、この境界をまたぐかどうかで、根拠となる条項自体が変わるフォントが少なくありません。

アウトライン化した文字とフォントファイルは別物

ロゴやポスターの中の「字の形」をアウトライン化(パスデータ化)したものと、ソフトウェアとしての「フォントファイルそのもの」は、条文上は別のものとして扱われます。前者は制作物の一部、後者はプログラム(ソフトウェア)です。@font-faceによる配信やアプリへの同梱は後者、つまりフォントファイルというソフトウェアを配布する行為にあたるため、多くのライセンスで商用利用とは別条項の対象になっています。

核心 — 条文に「書いてある」と「書いていない」の差

SIL OFLの場合 — 埋め込みは明記、Web配信は読み取り

当サイトが確認したOFL 1.1(Noto Sans JP・源ノ角ゴシック・M PLUS 1・Zen Kaku Gothic Newなど)の条文には、「Webフォント」という語が一度も登場しません。一方、アプリ・電子書籍への「埋め込み(embed)」は前文および第2条に明記があります。同じOFLフォントでも、当サイトの早見表が埋め込みを「可」、Web配信を「可(別条項)」と区別して表示しているのはこのためです。「可(別条項)」は、条文に直接の語句はないものの、第2条が定める再配布・改変・複製の許諾範囲に含まれると解される場合に使うラベルで、条文にそのまま書かれている「可」とは根拠の強さが異なります。

Apache License 2.0(Kosugi等)はOFLと条件が違う

Google Fonts配布のKosugi・Kosugi Maruは、OFLではなくApache License 2.0が適用されています。Apache 2.0にも「Webフォント」「アプリ」といったフォント特有の語は登場せず、当サイトでは第2条の包括的な複製・配布許諾からの読み取り(derived)として、商用利用・Web配信・アプリ埋め込みのいずれも「可(別条項)」としました。OFLとの大きな違いの一つが、フォントファイル単体の販売に関する規定の有無です。OFLはフォント単体の販売を明確に禁止する条項を持ちますが、Apache 2.0の第4条にはこの禁止規定がなく、著作権表示・変更箇所の明示等を条件に再配布を許諾しています。同じ「Google Fonts配布」でも、適用ライセンスが違えば条件も変わります。

IPAフォントライセンスの特殊事情

IPAフォント・IPAexフォントに適用される「IPAフォントライセンスv1.0」の条文本文は、第1条で「エンベッドされた」状態を定義していますが、この定義はPDF等のデジタル・ドキュメント内で表示専用に組み込まれる場合に限定されており、Webフォント配信やアプリへの同梱を直接扱ってはいません。

一方、公式FAQには具体的な事例があります。アプリへのフォント組込み配布(FAQ2.4)、旧Silverlightを例にしたサーバーからのフォント配信(FAQ2.6)について、それぞれ「再配布」に該当し条件付きで許諾されると説明されています。当サイトはこのFAQの記載を根拠に、Web配信・アプリ埋め込みを「可(別条項)」としました。

ただし、この整理を「FAQにこう書いてあるから安全」と読むのは早計です。文字情報技術促進協議会の公式ブログ(2024年)では、同ライセンス系列のMJ明朝体をWOFF化して配布するサービスが「使用許諾契約に違反しているのではないか」と問題視され、公開停止に至った経緯が紹介されています。FAQの事例は2010年代前半のSilverlightを想定した古いものであり、現代の一般的な@font-faceによるWebフォント配信を直接名指しした記述は、条文にもFAQにも見当たりません。IPAフォントのWeb配信・サブセット化の扱いは、実務上まだ流動的な面が残っていると当サイトは考えています。IPAexフォントにも同一のライセンスが適用され、事情は共通です。

OS同梱フォントは明確に不可の側

游ゴシック・メイリオなどWindows同梱フォントについては、Microsoft公式FAQがWebフォント配信・アプリ埋め込みのいずれも「不可」と明言しています。ここまで見てきたOFL・Apache・IPAフォントとは対照的に、条文(FAQ)が明快に「不可」の結論を示している数少ない例です。詳しい条文の引用と、macOS版ヒラギノとの情報量の違いについては、姉妹記事「OS同梱フォントを配布物に入れてよいのか」で扱っています。

有償フォントは「Web配信が別ライセンス」の典型

有償フォントの契約は、印刷物・映像などの通常利用と、Web配信・アプリ組込みとで契約自体が分かれている例が目立ちます。当サイトが確認した範囲では、SCREENのヒラギノフォント デスクトップライセンスは使用許諾範囲表でWebフォント配信・アプリ組込みをいずれも対象外とし、別途「Webフォントサービス」「アプリ組込みライセンス」の契約が必要と明記しています。フォントワークスLETSの基本規約も、サーバーへのフォント設置は原契約の許諾範囲外、アプリ・ゲームへの組込みには別途オプション契約が必要としています。ダイナフォントの使用許諾表も、サーバー設置・アプリへの埋め込みを全プランで別途許諾が必要な項目としています。モリサワのMORISAWA PASSPORTも、PASSPORT自体は@font-face配信を含まず、別製品が必要とされています。ただしこれらはいずれも契約プランにより異なりうるため、可否を断定することはできません。個別の契約内容は各社の規約ページで確認する必要があります。

実務チェックリスト — 配信・同梱の前に確認する項目

以下は「確認すべき項目」のリストであり、「このフォントなら安全」という判定ではありません。

  1. 条文に「Web」「webfont」「@font-face」といった語が直接あるか、それとも別条項からの読み取り(derived)かを確認する
  2. 条文に「embed」「組込み」「バンドル」といった語が直接あるか確認する(embedとwebfontは条文上、別の語として扱われていることが多い)
  3. OFLなら第2条の再配布許諾の範囲を、Apache 2.0なら第2条・第4条の複製配布条件を、それぞれ条文本文で読む
  4. 条文本文だけでなく公式FAQに個別事例の記載がないか確認する(IPAフォントのように、FAQが条文の空白を埋めている場合がある)
  5. 有償フォントの場合、契約プランに「Webフォント」「アプリ組込み」向けの別オプション・別製品が用意されていないか確認する
  6. OS同梱フォントかどうかを確認する(該当する場合、Webフォント配信・アプリ埋め込みとも不可と明言されている例がある)
  7. 条文に記載がない(null)項目を、うっかり「禁止」と読み替えていないか、最後にもう一度見直す
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出典一覧

このページを引用する場合

本記事の情報を引用・紹介いただく場合は、記事名「Webフォント配信とアプリ埋め込みは別の許諾 — @font-faceの前に条文のどこを見るか」と情報確認日「2026年7月25日」をあわせてお示しください。当ページへのリンクは任意です(リンクいただける場合は https://www.conbu.jp/tool/font-license/article-webfont-vs-embedding.html をご利用ください)。

利用前に必ず各提供元の最新の条文をご確認ください。

免責事項: 本記事は特定フォント・ベンダーの公式サイトではなく、法的助言を提供するものでもありません。掲載している内容は調査時点(2026年7月25日)でライセンス条文・公式FAQから確認できた要約です。ライセンスは改定されうるため、最新の条件は必ず各提供元の原文でご確認ください。詳細は免責事項をご確認ください。