卒FITとは?買取期間満了後の選択肢と損得の考え方
太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)には10年間の買取期間があり、この期間が満了することを「卒FIT」と呼びます。「卒FIT とは何か」「卒FIT になったらどうする」と調べている方に向けて、買取単価がどう変わるのか、そのまま売電継続・自家消費を増やす・蓄電池を追加するという3つの選択肢をどう比べればよいのかを整理します。本記事の数値は2026年7月21日時点で確認できた公式情報・データに基づく目安です。
卒FITとは - FIT買取期間10年の満了
住宅用太陽光発電(10kW未満)のFIT買取期間は、契約した年度にかかわらず10年間で固定されています。たとえば2012年度に42円/kWhで売電を始めた家庭であれば、10年後の2022年度に買取期間が満了し、卒FITを迎えたことになります。住宅用のFITは「余剰売電制度」であり、自宅で使った残りの余剰分だけを電力会社が買い取る仕組みです。卒FITとは、この10年間の固定買取期間が終わることを指す通称で、法律上の正式名称ではありませんが、業界・メディアで広く使われています。卒FITを迎えると、それまでの固定単価での買取契約は終了し、新たな買取契約(またはそれ以外の使い方)を自分で選ぶ必要があります。
卒FIT後の買取単価はいくらになるか
卒FIT後も、多くの電力会社は独自の買取プランを用意しており、そのまま売電を継続すること自体は可能です。ただし買取単価はFIT期間中よりも大きく下がり、電力会社によって差があります。2026年7月21日時点で確認できた主要電力会社の卒FIT買取単価は次の通りです。
| 電力会社 | 買取単価(円/kWh) | 確認状況 |
|---|---|---|
| 東京電力エナジーパートナー | 8.5 | 公式ページで確認済み(再エネ買取標準プラン) |
| 関西電力 | 8.00 | 公式ページで確認済み |
| 中部電力ミライズ | 7.0(シンプルプラン) | 公式ページで確認済み(申込不要の標準。電気契約とセットのプレミアムプラン8円等の条件付きプランあり) |
| 東北電力 | 9.0 | 公式ページで確認済み(シンプル買取) |
| 北海道電力 | 8.00 | 公式ページで確認済み(買取プラン) |
| 四国電力 | 7.00 | 公式ページで確認済み |
| 中国電力 | 7.15 | 公式ページで確認済み |
| 九州電力 | 7.00 | 公式ページで確認済み |
| 北陸電力 | 8.00(かんたん固定単価プラン) | 公式単価表で確認済み(2027年4月から「とくとく固定単価プラン」10.5円の適用が公表) |
| 沖縄電力 | 7.7(10kW未満)/8.2(10kW以上) | 公式ページで確認済み |
上記10社すべて、2026年7月21日時点で各社公式ページ(または公式単価表)にて単価を確認済みです(いずれも税込)。中部電力ミライズは、お申込みをしない場合の標準がシンプルプラン7円/kWhで、電気契約とセットのプレミアムプラン(8円/kWh)やポイント進呈型など条件付きの上位プランも用意されています。買取単価は各社が随時見直すため、契約前には必ず各社公式サイトで最新値をご確認ください。
卒FIT単価は各社が随時見直すため、契約中(予定)の電力会社の最新単価は必ず公式サイトでご確認ください。ご自身の単価を入力して具体的な金額を試算したい場合は、卒FIT後の損益計算ツールをご利用いただくと、その場で年間メリットまで計算できます。
選択肢の整理 - 売電継続・自家消費・蓄電池追加
卒FITを迎えたときの選択肢は、大きく分けて3つあります。
- そのまま売電を継続する: 契約中の電力会社の卒FITプランに申し込み、7〜9円/kWh程度の単価で売電を続ける方法です。手続きの手間が少ない一方、単価はFIT期間中よりかなり下がります。
- 自家消費を増やす: 卒FIT単価(7〜9円/kWh程度)よりも電気代の目安単価(31円/kWh、全国家庭電気製品公正取引協議会の目安)の方が高いため、昼間の電気の使い方を見直して自家消費を増やすほど、売電より得をする計算になります。現在の自家消費率がどれくらいかは自家消費率・自給率計算ツールで確認できます。
- 蓄電池を追加する: 昼間に発電した電力を蓄電池にためて夜間や日中の自家消費に回すことで、自家消費率をさらに引き上げる方法です。初期費用がかかるため、何年で元が取れるかを見極める必要があります。
3つの選択肢で年間の金額がどれだけ変わるかは、システム容量・自家消費率・契約先の卒FIT単価によって大きく異なります。具体的な数字は、卒FIT後の損益計算ツールに自分の条件を入力すると、その場で試算できます。
損得の考え方 - 卒FIT後の年間メリットを計算する
卒FIT後にどれくらいの金額になるのか、具体的な計算例で見てみましょう。以下は2026年7月21日時点の目安単価を使った試算例です。
条件: 太陽光システム容量5kW、地域係数1,000kWh/kW/年(太陽光発電協会JPEAの目安)、自家消費率30%、卒FIT買取単価8.5円/kWh(東京電力EPの例)、電気単価31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会の目安)。
- 年間発電量 = 5kW × 1,000kWh/kW = 5,000kWh
- 自家消費量 = 5,000kWh × 30% = 1,500kWh → 節約額 = 1,500kWh × 31円 = 46,500円
- 売電量 = 5,000kWh × 70% = 3,500kWh → 売電収入 = 3,500kWh × 8.5円 = 29,750円
- 年間経済メリット = 46,500円 + 29,750円 = 76,250円/年
この例では、自家消費で節約できる分(46,500円)の方が、売電収入(29,750円)より大きくなっています。これは電気代の単価(31円)が卒FIT単価(8.5円)より22.5円/kWh高いためで、自家消費率を上げるほど年間の経済メリットが増える計算になります。容量・自家消費率・契約先の単価を変えて試算したい場合は卒FIT後の損益計算ツールをお使いください。
蓄電池追加の判断材料 - 単価差と回収年数で考える
蓄電池を追加すべきかどうかは、感覚ではなく「単価差」で考えると整理しやすくなります。卒FIT後に自家消費が1kWh増えるごとの得は、電気単価(目安31円/kWh)と卒FIT買取単価の差額分です。たとえば卒FIT単価が8.5円/kWhの場合、単価差は31円−8.5円=22.5円/kWhとなり、この差額に蓄電池で増やせる自家消費量(kWh)を掛けた金額が、蓄電池導入による年間の追加メリットの目安になります。
一方で、蓄電池自体の価格は決して安くありません。2026年時点の市場平均は目安で17.7万円/kWh程度、レンジとしては15〜20万円/kWh程度とされています。容量が大きい機種ほど総額も大きくなるため、「年間の追加メリット」と「初期費用」を比べて、何年で回収できるかを計算したうえで判断することが重要です。卒FITだから蓄電池を追加した方が得、あるいは損、と一律には言えず、単価差・容量・使い方によって回収年数は変わります。なお、蓄電池には国のDR補助金や自治体の補助金が別途利用できる場合があり、実質負担額は変動します。具体的な回収年数は太陽光・蓄電池の投資回収年数計算ツールで試算できます。
よくある質問
卒FITになったら何もしないとどうなりますか?
契約している電力会社によって扱いが異なるため、必ず事前の確認が必要です。多くの電力会社では卒FIT後の買取プランに自動で切り替わる案内がされますが、切り替え手続きが必要な場合や、単価の異なる複数プランから選ぶ必要がある場合もあります。契約先の電力会社から届く案内や公式サイトを確認し、卒FITを迎える前に買取単価と手続き方法を把握しておくことをおすすめします。
卒FIT後も売電を続けることはできますか?
はい、可能です。多くの電力会社が卒FIT後専用の買取プランを用意しており、そのまま売電を継続できます。ただし買取単価はFIT期間中(2026年度の初期投資支援スキームでは1〜4年目24円/kWh・5〜10年目8.3円/kWh)と比べて大きく下がり、本記事の一覧表の通りおおむね7〜9円/kWh程度になります。
蓄電池は必ず追加した方がいいのですか?
一概には言えません。卒FIT単価より電気代の単価の方が高いケースが多いため、自家消費を増やすこと自体は経済的にプラスに働きやすい一方、蓄電池自体の初期費用(2026年時点の市場平均で目安17.7万円/kWh程度)がかかるため、回収年数が長くなることもあります。年間の追加メリットと初期費用を比べ、回収年数を計算したうえで判断してください。
卒FIT買取単価は今後も同じ金額のままですか?
いいえ、卒FIT買取単価はFITのような国の固定価格制度ではなく、各電力会社が独自に設定するプランのため、会社の判断で随時見直される可能性があります。本記事の単価は2026年7月21日時点の目安であり、契約中(予定)の電力会社の公式ページで最新の単価を確認することをおすすめします。
- 資源エネルギー庁「買取価格・期間等|FIT・FIP制度」 enecho.meti.go.jp
- 経済産業省プレスリリース「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します」 meti.go.jp
- 四国電力 卒FIT買取(公式確認済み) yonden.co.jp
- 中国電力 卒FIT買取(公式確認済み) energia.co.jp
- 九州電力 卒FIT買取(公式確認済み) customer.kyuden.co.jp
- 東京電力エナジーパートナー 卒FIT買取プラン tepco.co.jp
- 全国家庭電気製品公正取引協議会「電気料金の目安単価」 eftc.or.jp(2022年7月22日改定、2026年7月時点で据置)
- 蓄電池kWh単価(2026年市場平均の目安)に関する業界調査記事(複数の二次情報を突合)
データ基準日: 2026年7月21日時点。卒FIT買取単価は電力会社が随時見直すため、契約中(予定)の電力会社の公式ページで最新値をご確認ください。
免責事項: 本記事の内容は、公表されている目安値・公式情報等に基づく概算・学習用の解説であり、個別の契約内容や将来の買取単価を保証するものではありません。数値は2026年7月21日時点のものであり、電力会社が随時見直す可能性があります。契約・購入の判断は、必ず契約中(予定)の電力会社の公式単価と、複数の販売施工業者から取得した見積もりをあわせてご確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。本記事は特定の商品・サービス・電力会社を推奨するものではなく、投資助言を行うものでもありません。詳細は免責事項をご覧ください。