WCAG 2.2 の新達成基準一覧|9つの追加基準と変更点を日本語訳付きで解説
WCAG 2.2 では、WCAG 2.1になかった達成基準が新たに9つ追加されました。この記事では、W3CのWCAG 2.2勧告本文とWAICの公式日本語訳という一次資料を実際に確認した範囲で、9つの新設達成基準を番号・公式訳名・英語名・適合レベル付きの一覧表にまとめ、簡潔に解説します。あわせて4.1.1「解析」の削除など、確認できた変更点のみご紹介します。うち2.5.8「ターゲットのサイズ (最低限)」と2.4.13「フォーカスの外観」は、本サイトのターゲットサイズチェッカー・フォーカスの外観チェッカーで簡易チェックできます。
①WCAG 2.2 とは
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)2.2 は、W3Cが策定するウェブアクセシビリティの国際的なガイドラインです。現行版(正誤表反映版)は2024年12月12日付のW3C勧告(Recommendation)として公開されており、WAICが本文の公式日本語訳を公開しています。W3Cの文書には「WCAG 2.2に適合するコンテンツは、WCAG 2.0およびWCAG 2.1にも適合する」と明記されており、既存の達成基準を引き継ぎつつ新しい達成基準を追加する形で構成されています。勧告本文の「New Features in WCAG 2.2」の節には、新設された9つの達成基準と、達成基準4.1.1「解析」が削除されたことが記載されています。次章でこの9つを一覧にまとめます。
②新設された9つの達成基準 一覧表
W3CのWCAG 2.2勧告本文「New Features in WCAG 2.2」の節に列挙されている9つの達成基準を、番号順に整理しました。公式訳名はWAICの日本語訳(waic.jp)に基づきます。各行にid属性を付けているので、URL末尾に#sc-2-5-8のようにハッシュを付ければ特定の基準を直接指し示せます。
| 番号 | WAIC公式訳名 | 英語名 | レベル | 一言説明 |
|---|---|---|---|---|
| 2.4.11 | 隠されないフォーカス (最低限) | Focus Not Obscured (Minimum) | AA | フォーカスされたコンポーネントが、著者が作成したコンテンツによって完全には隠されないこと。 |
| 2.4.12 | 隠されないフォーカス (高度) | Focus Not Obscured (Enhanced) | AAA | フォーカスされたコンポーネントが、著者が作成したコンテンツによって一部も隠されないこと(2.4.11の強化版)。 |
| 2.4.13 | フォーカスの外観 | Focus Appearance | AAA | フォーカスインジケータが最低限の面積を持ち、かつフォーカス状態間で3:1以上のコントラスト比があること。 |
| 2.5.7 | ドラッグ動作 | Dragging Movements | AA | ドラッグで操作する機能は、ドラッグが必要不可欠でない限り、単一ポインタの操作でも行えること。 |
| 2.5.8 | ターゲットのサイズ (最低限) | Target Size (Minimum) | AA | ポインタ入力のターゲットが少なくとも24×24 CSSピクセル、またはSpacing(間隔)等の例外を満たすこと。 |
| 3.2.6 | 一貫したヘルプ | Consistent Help | A | 同じ機能を持つヘルプ機構が複数箇所・複数ページに存在する場合、その表示位置を一貫させること。 |
| 3.3.7 | 冗長な入力項目 | Redundant Entry | A | 以前の手順で入力済みの情報を、自動入力または選択して再利用できるようにすること。 |
| 3.3.8 | アクセシブルな認証 (最低限) | Accessible Authentication (Minimum) | AA | 認証に認知機能テストを必須としないこと(セキュリティ上必要不可欠、または代替手段がある場合を除く)。 |
| 3.3.9 | アクセシブルな認証 (高度) | Accessible Authentication (Enhanced) | AAA | 認証に認知機能テストを一切必須としないこと(例外なし)。 |
レベル別に数えると、レベルAが2つ(3.2.6・3.3.7)、レベルAAが4つ(2.4.11・2.5.7・2.5.8・3.3.8)、レベルAAAが3つ(2.4.12・2.4.13・3.3.9)です。
③各基準の解説
2.4.11・2.4.12 隠されないフォーカス
フォーカスが当たったコンポーネントが、固定ヘッダーやCookie同意バナーなどに隠れてしまう問題に対応する達成基準です。2.4.11(AA)は「完全には隠されない」ことを、2.4.12(AAA)はより厳しく「一部も隠されない」ことを求めます。
2.4.13 フォーカスの外観(レベルAAA)
フォーカスインジケータの見えやすさを、面積とコントラスト比の数値要件で規定する達成基準です。フォーカス時と非フォーカス時で同一ピクセルのコントラスト比が3:1以上あり、かつインジケータの面積が一定の計算式以上であることを求めます。本サイトのフォーカスの外観チェッカーで寸法とリングの色・太さから簡易チェックでき、計算式はフォーカスの外観の解説記事で詳しく解説しています。
2.5.7 ドラッグ動作(レベルAA)
ドラッグ操作を前提にした機能に対し、ドラッグが必要不可欠でない限り、クリックやタップだけの単一ポインタ操作でも同じ結果を得られる代替手段を求める達成基準です。手先の細かい動きが難しい利用者への配慮が目的です。
2.5.8 ターゲットのサイズ (最低限)(レベルAA)
ボタンやリンクなどポインタで操作するターゲットに、少なくとも24×24 CSSピクセルの大きさを求める達成基準です。小さくても隣接ターゲットとの間隔が一定以上あれば「Spacing(間隔)」例外で基準を満たせます。本サイトのターゲットサイズチェッカーで幅・高さ・間隔を簡易チェックでき、詳細はターゲットサイズの解説記事で解説しています。
3.2.6 一貫したヘルプ(レベルA)
問い合わせ先やチャットボットなど同じ役割のヘルプ機構が複数ページに繰り返し登場する場合、その表示位置をページ間でばらつかせないことを求める達成基準です。
3.3.7 冗長な入力項目(レベルA)
複数ステップの入力フォームで、前のステップで入力済みの情報を同じ手続き内で再度手入力させないことを求める達成基準です。自動入力するか、以前の入力値を選択できるようにする必要があります。
3.3.8・3.3.9 アクセシブルな認証
ログイン等の認証時に、パスワードの記憶・文字の書き写し・パズルを解くといった「認知機能テスト」を必須にしないことを求める達成基準です。3.3.8(AA)はセキュリティ上必要不可欠な場合や代替手段がある場合を例外としますが、3.3.9(AAA)は例外なく必須にしないことを求めます。
④WCAG 2.1からのその他の変更点
W3Cの勧告本文で確認できた、達成基準の新設以外の主な変更点は次のとおりです。
- 4.1.1「解析」(Parsing)の削除: WCAG 2.1にあった達成基準4.1.1が削除されました。支援技術がHTMLを直接解析する必要がなくなり、対処していた問題が解消したか他の基準で対処されているためとされています。ただしWCAG 2.0/2.1への適合が義務付けられている場合、引き続き4.1.1のテスト・報告が必要になることがあります。
- 後方互換性の明記: 「WCAG 2.2に適合するコンテンツは、WCAG 2.0およびWCAG 2.1にも適合する」ことが明記されています。
- プライバシー・セキュリティに関する新しい節の追加: 仕様に影響しうる観点を説明する節が新たに追加されています。
- 用語集への新用語の追加: 新設基準が参照する新しい用語(認知機能テストなど)が追加されています。
⑤日本での位置づけ
国内規格のJIS X 8341-3:2016とWCAG 2.2の技術的な対応関係の詳細は、この記事では扱いません。WAICが公開しているQ&Aページによれば、JIS X 8341-3:2016への対応度表記はウェブページ一式単位の試験結果に基づいて行える一方、WCAG 2.2への適合はウェブページごとに評価する点に注意が必要です。詳しい進め方はそちらのページをご確認ください。
よくある質問
WCAG 2.2で新しく追加された達成基準はいくつありますか?
9つです。W3CのWCAG 2.2勧告本文「New Features in WCAG 2.2」の節に、2.4.11・2.4.12・2.4.13・2.5.7・2.5.8・3.2.6・3.3.7・3.3.8・3.3.9の9つが新設の達成基準として明記されています。レベル別ではA(3.2.6・3.3.7)が2つ、AA(2.4.11・2.5.7・2.5.8・3.3.8)が4つ、AAA(2.4.12・2.4.13・3.3.9)が3つです。
WCAG 2.1にあった達成基準でWCAG 2.2で削除されたものはありますか?
はい。達成基準4.1.1「解析」(Parsing)が削除されました。W3Cの説明によれば、支援技術がHTMLを直接解析する必要がなくなり問題が解消した、または他の達成基準で対処されているためとされています。ただしWCAG 2.0/2.1への適合を義務付けられている場合は、引き続き4.1.1のテスト・報告が必要になる場合があります。
WCAG 2.2に対応すれば、WCAG 2.0やWCAG 2.1にも対応したことになりますか?
W3Cの文書には「WCAG 2.2に適合するコンテンツは、WCAG 2.0およびWCAG 2.1にも適合する」と明記されています。WCAG 2.2は既存の達成基準を後方互換の形で引き継ぎつつ、新しい達成基準を追加した構成になっています。
- W3C WCAG 2.2 勧告本文「New Features in WCAG 2.2」の節: https://www.w3.org/TR/WCAG22/#new-features-in-wcag-2-2
- W3C WCAG 2.2 勧告本文(各達成基準の規範条文): https://www.w3.org/TR/WCAG22/
- WCAG 2.2 本文 日本語訳(WAIC、公式訳名の確認元): https://waic.jp/translations/WCAG22/
- Understanding SC 3.3.8 Accessible Authentication (Minimum)(認知機能テストの定義・例): https://www.w3.org/WAI/WCAG22/Understanding/accessible-authentication-minimum.html
- JIS X 8341-3:2016とWCAG 2.1・WCAG 2.2などを同時に対応する場合のQ&A(WAIC): https://waic.jp/qa/jis-wcag/
この記事を引用する場合
この一覧表・記事を引用・紹介いただく場合は、ページ名「WCAG 2.2 の新達成基準一覧」と情報確認日「2026年7月22日」をあわせてお示しください。当サイトへのリンクは任意です。
変更履歴
- 2026-07-22: 初版公開
免責事項: 本記事は、WCAG 2.2に関するW3C・WAICの一次資料を実際に確認した範囲での解説であり、W3C・WAICの公式ページではありません。「WCAG適合」を保証・断定するものではなく、正式な適合判断は必ず一次資料および専門家によるアクセシビリティ監査でご確認ください。詳細は免責事項をご確認ください。