← 判定ツールへ戻る

技術フラグと利用許諾は別物

フォントファイルの中の fsType は、そのフォントを使ってよい条件を書いたものではありません。ここでは、実際にフォントファイルを読み取った結果を使って、この2つがどう食い違うのかを示します。

公式サイトではありません。フォントの提供元や、仕様を策定している団体が運営するページではありません。

情報確認日:/フォントファイルを読み取った日:

仕様そのものが「許諾は提供元が与えるもの」と書いている

OpenType 仕様の OS/2 テーブルの解説には、fsType について次の一文があります。

Embedding licensing rights are granted by the vendor of the font.

(出典:OpenType 仕様 OS/2 テーブル、fsType の Comments 欄。確認日 2026年8月4日)

つまり、埋め込みに関する許諾を与えるのはフォントの提供元であって、fsType という2バイトの値そのものではありません。fsType は、提供元が「この値を設定した」という事実を記録したフィールドです。同じ仕様は、アプリケーションに対して、この欄の値を書き換えてはならないとも書いています。本ツールが読み取り専用で、書き換え機能を持たないのはそのためです。

読み取った条件(先に書きます)

ここから先の数字は、2026年8月4日に読み取った261ファイル・316面の結果です。標本は2つの出所からなります。

1つのファイルに複数の書体が入る形式があるため、ファイル数より面数が多くなります。数字を読むときは、どちらの出所の話かを確かめてください。いずれにしても、これは「入手できるフォント全体」を代表する標本ではありません。

出所中身ファイル数/面数
A作業に使った1台のWindows PCにインストール済みだったファイル。どこから入ったものかは特定できません(OSに同梱されたものと、後から入れたものが混ざっています)。232ファイル/287面
BGoogle Fonts の公式リポジトリから取得したファイル(13ファミリ)。こちらは配布元が特定できます。29ファイル/29面
合計261ファイル/316面
出所 A の232ファイルを、特定のOSに同梱されるフォントとして数えることはできません。

取得したのは Google Fonts の公式リポジトリからだけで、それ以外の配布元からは取得していません。フォントファイルそのものは、このページからもどこからも配布していません。

1. 同じライセンス記述を申告する110ファミリで、fsType が3種類に割れた

フォントは name テーブルの nameID 13(ライセンス記述)に、自分が何のライセンスで配布されているかを書き込んでいます。出所 A(PCにインストール済みだった232ファイル)の中に、この値が「Microsoft supplied font.」で始まる同じ文字列であるファイルが110ファミリ・195面ありました。

この110ファミリの fsType は、0 / 4 / 8 の3種類に割れていました。

fsType本ツールの表示ファミリ数
8編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)102Arial/Calibri/Consolas/メイリオ/MS ゴシック/游ゴシック ほか
4閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)7BIZ UDGothic/BIZ UDPGothic/BIZ UDMincho Medium/BIZ UDPMincho Medium/UD Digi Kyokasho N/UD Digi Kyokasho NK/UD Digi Kyokasho NP
0制限なし(Installable embedding)1MT Extra
この110という数は「そう名乗っているファイルの数」です。出所 A だけの集計です。

nameID 13 はファイル自身が書き込んでいる申告なので、出所を推定せずに読めます。ただしそれは「そのファイルがそう名乗っている」という事実であって、特定のOSに同梱されるフォントの数ではありません。出所 A の232ファイルがどこから入ったものかは特定できないためです。

4 だった7ファミリは、すべて日本語のUD書体でした。以下は、この110ファミリのうちライセンス早見表に解説ページがある書体だけを抜き出した表です。

書体(nameID 1)ファイルフォントのバージョンfsType本ツールの表示
Meiryomeiryo.ttcVersion 6.518編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
MS Gothicmsgothic.ttcVersion 5.328編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
MS Minchomsmincho.ttcVersion 5.328編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
Yu GothicYuGothB.ttcVersion 1.958編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
Yu Gothic UIYuGothB.ttcVersion 1.958編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
Yu Minchoyumin.ttfVersion 1.928編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
BIZ UDGothicBIZ-UDGothicB.ttcVersion 2.024閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)
BIZ UDPGothicBIZ-UDGothicB.ttcVersion 2.024閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)
BIZ UDMincho MediumBIZ-UDMinchoM.ttcVersion 2.034閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)
BIZ UDPMincho MediumBIZ-UDMinchoM.ttcVersion 2.034閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)

抜き出した10書体のうち6書体が 8、4書体が 4。申告しているライセンス記述は同一です。ここから言えるのは、申告しているライセンス文言が同じでも fsType は同じにならないということです。fsType はライセンス条文を反映した値ではなく、フォント提供元がファイルごとに設定した技術的な値です。

表の2列目はファイル名です。同じ YuGothB.ttc の中に Yu Gothic と Yu Gothic UI の2書体が入っているように、1つのファイルに複数の書体が入ることがあります。判定ツールが中の書体を全件表示するのはこのためです。

なお、この表の BIZ UD 4行はMicrosoft が供給している版のファイルです。同じ書体名で Google Fonts から配布されている版は別のファイルで、値も違いました。次の節で並べます。

2. 同じ書体名でも、どこから手に入れたかで値が違った

BIZ UDゴシック・BIZ UDPゴシック・BIZ UD明朝・BIZ UDP明朝 の4書体は、Google Fonts でも配布され、Microsoft からも供給されています。この2つの配布経路のファイルを両方読み取りました。

書体配布経路ファイルが名乗る書体名(nameID 1)ファイルフォントのバージョン申告しているライセンス(nameID 13)fsType
BIZ UDゴシックGoogle FontsBIZ UDGothicBIZUDGothic-Bold.ttfVersion 1.05SIL Open Font License 1.10(制限なし)
Microsoft 供給BIZ UDGothicBIZ-UDGothicB.ttcVersion 2.02Microsoft supplied font.…4(閲覧・印刷のみ)
BIZ UDPゴシックGoogle FontsBIZ UDPGothicBIZUDPGothic-Bold.ttfVersion 1.051SIL Open Font License 1.10(制限なし)
Microsoft 供給BIZ UDPGothicBIZ-UDGothicB.ttcVersion 2.02Microsoft supplied font.…4(閲覧・印刷のみ)
BIZ UD明朝Google FontsBIZ UDMinchoBIZUDMincho-Bold.ttfVersion 1.06SIL Open Font License 1.10(制限なし)
Microsoft 供給BIZ UDMincho MediumBIZ-UDMinchoM.ttcVersion 2.03Microsoft supplied font.…4(閲覧・印刷のみ)
BIZ UDP明朝Google FontsBIZ UDPMinchoBIZUDPMincho-Bold.ttfVersion 1.06SIL Open Font License 1.10(制限なし)
Microsoft 供給BIZ UDPMincho MediumBIZ-UDMinchoM.ttcVersion 2.03Microsoft supplied font.…4(閲覧・印刷のみ)

4書体すべてで、同じ書体名でありながら fsType04 に分かれました。申告しているライセンス記述も違い、Google Fonts で配布されている版は SIL Open Font License 1.1 を名乗っています。

これは、このツールが必要な理由そのものです。

同じ書体名のフォントでも、どこから手に入れたかによって、ファイルに書き込まれている値が違います。だから「この書体の値」を調べるのではなく、手元にあるそのファイルを開いて確かめる必要があります。書体名から値を推測することはできません。

どちらかが「誤っている」のではありません。

この2つは別の配布物です。どちらの値も、その配布物について提供元が設定したものです。矛盾として読まないでください。明朝の2書体はファイルが名乗る書体名まで違い(BIZ UDMinchoBIZ UDMincho Medium)、別のビルドであることがファイル自身から分かります。

製造元(nameID 8)はどちらの版も Morisawa Inc. です。Microsoft 供給版の著作権表示は Font © Copyright 2019 Morisawa Inc. All rights reserved. で、供給元と制作元が別であることもファイルの中から読み取れます。ライセンスURL(nameID 14)は、Google Fonts で配布されている版には入っていますが、Microsoft 供給版には入っていません。

ライセンス早見表の BIZ UD 4件の記載は、Google Fonts で配布されている版を対象にしています。そちらの読み取り値は 0 で、早見表の記載と整合しています。

3. 条文が「不可」と書いている6書体の技術フラグが、編集と保存まで対象に含む区分だった

ライセンス早見表は、Windowsに同梱される次の6書体について、ゲーム・アプリへの埋め込みを「不可と明記」と記録しています(早見表の確認日 2026年7月25日)。文書(PDF等)への埋め込みは別のルールで条件付きに扱われる、という注記つきです。

この6書体を読み取った fsType は、いずれも 8 = Editable embedding でした。埋め込んだ先で編集して保存することまで対象に含む区分です。

8 は「仕様上いちばん緩い値」ではありません。

4つの区分は緩い順に一直線には並びません。仕様が他のシステムへの恒久的なインストールまで対象に含めているのは 0 だけです。48 はどちらも一時的な読み込みを前提とする区分で、そのうち 8 は編集と保存まで対象に含む側、という関係になります。

書体早見表のアプリ組込みの記載読み取った fsType
Meiryo不可と明記8
MS Gothic不可と明記8
MS Mincho不可と明記8
Yu Gothic不可と明記8
Yu Gothic UI不可と明記8
Yu Mincho不可と明記8

条文の側で「アプリへの埋め込みは不可」と明記されている書体が、技術フラグの側では「編集を伴う埋め込みまでを対象に含む区分」になっています。技術フラグが広い範囲を対象にしていることは、契約上許されていることを意味しません。

なお、早見表の記載対象と今回読み取った対象は、どちらもWindowsに同梱される版です。ただし早見表の確認日は2026年7月25日、読み取りは2026年8月4日で、別々の時点の別々の資料である点はそのまま書いておきます。

4. 区分の数がそもそも違う

fsType の下位4ビットが表せるのは 0 / 2 / 4 / 84区分だけです(仕様が有効な値をこの4つと定めています)。一方、ライセンス早見表が実務上必要とした許諾の区分は6つあります。商用利用、Web配信、アプリ組込み、ロゴ・商標利用、改変、再配布です。

1個の技術フラグに、6個の論点を背負わせることはできません。これは実際に読み取った値ではなく、仕様の記述と既存データの構造を比べただけで分かることです。

5. この標本で観測できた値の範囲

316面で観測できた fsType は次のとおりです。これは一般的な傾向ではありません。上に書いたとおり、この標本は1台のPCに入っていたファイル287面(出所 A)と、Google Fonts の公式リポジトリから取得したファイル29面(出所 B)を合わせたもので、出所 A については入手経路も特定できないためです。

fsType本ツールの表示面数
0制限なし(Installable embedding)70
4閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)13
8編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)233
「現れなかった」は「存在しない」ではありません。

上の3点はいずれもこの標本で観測されなかったという意味しか持ちません。手元のファイルがどの値かは、実際に開いて確かめる以外に確かめようがありません。

6. オープンライセンスを申告していても、fsType が 0 とは限らない

同じ標本の中に反例があります。

nameID 13 に SIL Open Font License 1.1 を申告している面は53面・44ファミリありました。うち43ファミリは fsType0 でしたが、1ファミリは 8 でした。Sans Serif Collection(著作権表示は The Noto Project Authors、製造元は Monotype Imaging Inc.)です。「オープンライセンスを名乗っていれば 0」とは言えません。

読み取った中で、ライセンス早見表に解説ページがあり、かつオープンライセンス(SIL Open Font License 1.1 または Apache License 2.0)を名乗っていた書体は19書体でした。この19書体はいずれも fsType0 でした。

書体読み取ったファイルの出所申告しているライセンス(nameID 13)fsType
Noto Sans JPA(PCにインストール済み)SIL Open Font License 1.10
Noto Serif JPA(PCにインストール済み)SIL Open Font License 1.10
Dela Gothic OneA(PCにインストール済み)SIL Open Font License 1.10
Yusei MagicA(PCにインストール済み)SIL Open Font License 1.10
M PLUS Rounded 1c(ファイルの名乗りは Rounded Mplus 1c)A(PCにインストール済み)SIL Open Font License 1.10
Kosugi MaruA(PCにインストール済み)Apache License 2.00
BIZ UDゴシックB(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
BIZ UDPゴシックB(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
BIZ UD明朝B(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
BIZ UDP明朝B(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
Kaisei TokuminB(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
Klee OneB(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
KosugiB(Google Fonts)Apache License 2.00
M PLUS 1(ファイルの名乗りは M PLUS 1 Thin)B(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
M PLUS 2(ファイルの名乗りは M PLUS 2 Thin)B(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
さわらびゴシックB(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
さわらび明朝B(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
しっぽり明朝B(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
Zen Kaku Gothic NewB(Google Fonts)SIL Open Font License 1.10
19書体では傾向は語れません。

ここで言えるのは「読み取った19書体はいずれも 0 だった」までです。オープンライセンスのフォント一般について何かを言える件数ではありませんし、上に書いたとおり同じ標本の中に 8 の例が実在します。また、BIZ UD の4書体については、同じ書体名でも Microsoft 供給版のほうは OFL を名乗っておらず、fsType4 でした(2節)。名乗っているライセンスも配布経路で変わります。

7. どこまで読み取れたのか(カバー率)

ライセンス早見表に掲載している42書体のうち、実際にファイルを読み取れたのは25書体、17書体は読み取っていません。

状態書体数内容
読み取った(出所 A:PCにインストール済み)12このページの表に出ている書体です。
読み取った(出所 B:Google Fonts から取得)13うち BIZ UD の4書体は、Microsoft 供給版と両方読み取っています(2節)。
有償フォント5購入が必要なため、ファイルを持っていません。
macOSに同梱1読み取りに使ったのはWindows環境です。
無料で配布されているが未読み取り11「入手できない」のではなく「今回は取得していない」ものです。この2つを混ぜて数えていません。今回取得したのは Google Fonts の公式リポジトリからだけで、それ以外の配布元からは取得していません。
書体名の文字列だけで突き合わせると一致しません。

早見表の見出しは「M PLUS Rounded 1c」ですが、ファイル自身が名乗る書体名(nameID 1)は Rounded Mplus 1c で、語順が違います。同じ書体でも配布経路で名乗りが違うこともあります(BIZ UDMinchoBIZ UDMincho Medium)。手元のファイルを確かめるときも、書体名の一致だけを頼りにしないでください。

まとめ

参考資料

このページの数字は、2026年8月4日にフォントファイル261件・316面を読み取った結果です。内訳は、作業に使った1台のWindows PCにインストール済みだった232件(287面)と、Google Fonts の公式リポジトリから取得した29件(29面)です。