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技術フラグと利用許諾は別物

フォントファイルの中の fsType は、そのフォントを使ってよい条件を書いたものではありません。ここでは、実際にフォントファイルを読み取った結果を使って、この2つがどう食い違うのかを示します。

公式サイトではありません。フォントの提供元や、仕様を策定している団体が運営するページではありません。

情報確認日:/フォントファイルを読み取った日:

仕様そのものが「許諾は提供元が与えるもの」と書いている

OpenType 仕様の OS/2 テーブルの解説には、fsType について次の一文があります。

Embedding licensing rights are granted by the vendor of the font.

(出典:OpenType 仕様 OS/2 テーブル、fsType の Comments 欄。確認日 2026年8月4日)

つまり、埋め込みに関する許諾を与えるのはフォントの提供元であって、fsType という2バイトの値そのものではありません。fsType は、提供元が「この値を設定した」という事実を記録したフィールドです。同じ仕様は、アプリケーションに対して、この欄の値を書き換えてはならないとも書いています。本ツールが読み取り専用で、書き換え機能を持たないのはそのためです。

読み取った条件(先に書きます)

ここから先の数字は、2026年8月4日に、作業に使った1台のWindows PCにインストール済みのフォントファイルを読み取った結果です。

対象は232ファイル・287面(1つのファイルに複数の書体が入る形式があるため、ファイル数より面数が多くなります)。フォントのダウンロードは一切行っていません。したがってこれは「入手できるフォント全体」の標本ではなく、この1台に入っていたものの集まりです。232ファイルがどこから入ったものかは特定できないため、特定のOSに同梱されるフォントの傾向としては読めません。

1. 同じライセンス記述を申告する110ファミリで、fsType が3種類に割れた

フォントは name テーブルの nameID 13(ライセンス記述)に、自分が何のライセンスで配布されているかを書き込んでいます。読み取った中に、この値が「Microsoft supplied font.」で始まる同じ文字列であるファイルが110ファミリ・195面ありました。

この110ファミリの fsType は、0 / 4 / 8 の3種類に割れていました。

fsType本ツールの表示ファミリ数
8編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)102Arial/Calibri/Consolas/メイリオ/MS ゴシック/游ゴシック ほか
4閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)7BIZ UDGothic/BIZ UDPGothic/BIZ UDMincho Medium/BIZ UDPMincho Medium/UD Digi Kyokasho N/UD Digi Kyokasho NK/UD Digi Kyokasho NP
0制限なし(Installable embedding)1MT Extra
この110という数は「そう名乗っているファイルの数」です。

nameID 13 はファイル自身が書き込んでいる申告なので、出所を推定せずに読めます。ただしそれは「そのファイルがそう名乗っている」という事実であって、特定のOSに同梱されるフォントの数ではありません。読み取った232ファイルがどこから入ったものかは特定できないためです。

4 だった7ファミリは、すべて日本語のUD書体でした。以下は、この110ファミリのうちライセンス早見表に解説ページがある書体だけを抜き出した表です。

書体(nameID 1)ファイルフォントのバージョンfsType本ツールの表示
Meiryomeiryo.ttcVersion 6.518編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
MS Gothicmsgothic.ttcVersion 5.328編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
MS Minchomsmincho.ttcVersion 5.328編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
Yu GothicYuGothB.ttcVersion 1.958編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
Yu Gothic UIYuGothB.ttcVersion 1.958編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
Yu Minchoyumin.ttfVersion 1.928編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)
BIZ UDGothicBIZ-UDGothicB.ttcVersion 2.024閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)
BIZ UDPGothicBIZ-UDGothicB.ttcVersion 2.024閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)
BIZ UDMincho MediumBIZ-UDMinchoM.ttcVersion 2.034閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)
BIZ UDPMincho MediumBIZ-UDMinchoM.ttcVersion 2.034閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)

抜き出した10書体のうち6書体が 8、4書体が 4。申告しているライセンス記述は同一です。ここから言えるのは、申告しているライセンス文言が同じでも fsType は同じにならないということです。fsType はライセンス条文を反映した値ではなく、フォント提供元がファイルごとに設定した技術的な値です。

表の2列目はファイル名です。同じ YuGothB.ttc の中に Yu Gothic と Yu Gothic UI の2書体が入っているように、1つのファイルに複数の書体が入ることがあります。判定ツールが中の書体を全件表示するのはこのためです。

2. 同じ書体名でも、配布経路が違えば別のファイル

上の表の BIZ UD 4書体について、「この書体には埋め込みの制限がある」とは書けません。

この4書体について読み取れたのは、nameID 13 に「Microsoft supplied font.」と自己申告している版のファイルだけです。同じ書体名で、別の配布経路から配られている版は読み取っていません。

対象分かっていること
今回読み取ったファイル nameID 13 が「Microsoft supplied font.」で始まる版 fsType4。nameID 14(ライセンスURL)は入っていません。製造元(nameID 8)は Morisawa Inc.、著作権表示は Font © Copyright 2019 Morisawa Inc. All rights reserved. で、供給元と制作元が別であることもファイルの中から読み取れます。
ライセンス早見表の BIZ UD 4件の記載 Google Fonts で配布されている版(SIL Open Font License 1.1) 早見表の記載は、この配布経路を対象にしています。この版の fsType は読み取っていません。ファイルを入手していないためです。

この2つを並べて「食い違っている」と読むことはできません。違う配布物だからです。ここから言えるのは、同じ書体名でも配布経路が違えば技術フラグが違いうるので、手元にあるファイルを開いて確かめる必要があるということです。書体名から値を推測することはできません。

配布経路の食い違いがあるのは、この BIZ UD 4書体だけです。

読み取れた16書体には、早見表が Google Fonts で配布されている版を対象にしている書体も複数含まれており、そちらはファイルが名乗るライセンスと早見表の記載が一致しています(6節の表の書体がそれにあたります)。「Google Fonts で配布されている版はまったく読み取っていない」わけではありません。

3. 条文が「不可」と書いている6書体の技術フラグが、編集と保存まで対象に含む区分だった

ライセンス早見表は、Windowsに同梱される次の6書体について、ゲーム・アプリへの埋め込みを「不可と明記」と記録しています(早見表の確認日 2026年7月25日)。文書(PDF等)への埋め込みは別のルールで条件付きに扱われる、という注記つきです。

この6書体を読み取った fsType は、いずれも 8 = Editable embedding でした。埋め込んだ先で編集して保存することまで対象に含む区分です。

8 は「仕様上いちばん緩い値」ではありません。

4つの区分は緩い順に一直線には並びません。仕様が他のシステムへの恒久的なインストールまで対象に含めているのは 0 だけです。48 はどちらも一時的な読み込みを前提とする区分で、そのうち 8 は編集と保存まで対象に含む側、という関係になります。

書体早見表のアプリ組込みの記載読み取った fsType
Meiryo不可と明記8
MS Gothic不可と明記8
MS Mincho不可と明記8
Yu Gothic不可と明記8
Yu Gothic UI不可と明記8
Yu Mincho不可と明記8

条文の側で「アプリへの埋め込みは不可」と明記されている書体が、技術フラグの側では「編集を伴う埋め込みまでを対象に含む区分」になっています。技術フラグが広い範囲を対象にしていることは、契約上許されていることを意味しません。

なお、早見表の記載対象と今回読み取った対象は、どちらもWindowsに同梱される版です。ただし早見表の確認日は2026年7月25日、読み取りは2026年8月4日で、別々の時点の別々の資料である点はそのまま書いておきます。

4. 区分の数がそもそも違う

fsType の下位4ビットが表せるのは 0 / 2 / 4 / 84区分だけです(仕様が有効な値をこの4つと定めています)。一方、ライセンス早見表が実務上必要とした許諾の区分は6つあります。商用利用、Web配信、アプリ組込み、ロゴ・商標利用、改変、再配布です。

1個の技術フラグに、6個の論点を背負わせることはできません。これは実際に読み取った値ではなく、仕様の記述と既存データの構造を比べただけで分かることです。

5. この標本で観測できた値の範囲

287面で観測できた fsType は次のとおりです。これは一般的な傾向ではありません。上に書いたとおり、この1台に入っていたファイルの集まりであり、出所も特定できないためです。

fsType本ツールの表示面数
0制限なし(Installable embedding)41
4閲覧・印刷のみ(Preview & Print embedding)13
8編集を伴う埋め込みも可(Editable embedding)233
「現れなかった」は「存在しない」ではありません。

上の3点はいずれもこの標本で観測されなかったという意味しか持ちません。手元のファイルがどの値かは、実際に開いて確かめる以外に確かめようがありません。

6. オープンライセンスを申告していても、fsType が 0 とは限らない

同じ標本の中に反例があります。

nameID 13 に SIL Open Font License 1.1 を申告している面は25面・23ファミリありました。うち22ファミリは fsType0 でしたが、1ファミリは 8 でした。Sans Serif Collection(著作権表示は The Noto Project Authors、製造元は Monotype Imaging Inc.)です。「オープンライセンスを名乗っていれば 0」とは言えません。

このうち、ライセンス早見表に解説ページがある書体は6つ読み取れました。この6書体はいずれも fsType0 でした。

書体申告しているライセンス(nameID 13)fsType
Noto Sans JPSIL Open Font License 1.10
Noto Serif JPSIL Open Font License 1.10
Dela Gothic OneSIL Open Font License 1.10
Yusei MagicSIL Open Font License 1.10
M PLUS Rounded 1c(ファイルの名乗りは Rounded Mplus 1c)SIL Open Font License 1.10
Kosugi MaruApache License 2.00
6書体では傾向は語れません。

ここで言えるのは「読み取った6書体はいずれも 0 だった」までです。オープンライセンスのフォント一般について何かを言える件数ではありませんし、上に書いたとおり同じ標本の中に 8 の例が実在します。

7. どこまで読み取れたのか(カバー率)

ライセンス早見表に掲載している42書体のうち、実際にファイルを読み取れたのは16書体、26書体は読み取っていません。

状態書体数内容
読み取った16このページの表に出ている書体です。
有償フォント5購入が必要なため、ファイルを持っていません。
macOSに同梱1読み取りに使ったのはWindows環境です。
無料で配布されているが未読み取り20「入手できない」のではなく「今回は入手していない」ものです。この2つを混ぜて数えていません。
書体名の表記ゆれで、読み取り済みの書体を取りこぼしていました。

早見表の見出しは「M PLUS Rounded 1c」ですが、ファイル自身が名乗る書体名(nameID 1)は Rounded Mplus 1c で、語順が違います。書体名の文字列だけで突き合わせると一致しません。手元のファイルを確かめるときも、書体名の一致だけを頼りにしないでください。

まとめ

参考資料

このページの数字は、2026年8月4日に、作業に使った1台のWindows PCにインストール済みのフォントファイル232件・287面を読み取った結果です。フォントのダウンロードは行っていません。